2014-11

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aQuA -アクア- / Chapter 4 - part 2


Chapter 4




 2



謎の民家からほどなくして三人はザリの町へとたどり着いたのだが、町の様子を見て唖然とした。

「いったい、これはどういうこと?まるで廃墟じゃない」
「魔物にでも襲われたのでしょうか……」

ほとんどの建物は崩壊しており、無事に残った数軒に人々は住んでいるようだった。
しかし、町が半壊滅状態だというのに町の人は復旧作業をしている様子もなく、まるで最初からこうなんですという顔で生活している。

「あっきれた。町がこんな状態だっていうのに、よく平気で暮らせるわね」

ルーンが呆れて溜め息をついた。

「とにかく町の人に事情を訊いてみよう」

クリスはそう言うと、近くにいた女性に声をかけてみた。

「すみません、この町で何か起きたんですか?」
「あんたたち誰?どこから来たのか知らないけど、よそ者は口を挟まないでちょうだい」

女性は怪訝な顔でそれだけ言うと、さっさと去ってしまった。

「なによあの態度!感じ悪いわね!」

ルーンがわざと聞こえるように言うと、周りにいた人たちが一斉に三人を睨んだ。
ルーンが肩をすくめて「おかしな人たちね」と一言もらした。

それからも町の人たちに声をかけたが反応は同じだった。
怒鳴り返す人や無視をする人ばかり。
まともに話をしてくれる人など誰一人としていなかった。
三人が途方に暮れて民家の壁にもたれかかっていると、一人の老人が近づいてきた。

「そこの旅の方々。こんな町に何の用かの?」

どうやらこの老人はまともなようだった。
クリスが事情を説明すると、老人はやれやれと溜め息ついた。

「わしはロバート。二月ほど前にこの町に越して来たんじゃが、町の住人があんな態度じゃろ?本当におかしなヤツばかりじゃ。こっちがちょっと何か訊ねるとすぐ怒鳴り返してくる。しまいに耐え切れなくなって、今は町から少し離れた場所で暮らしておるんじゃが、町があれじゃ買い物もまともにできん。けっきょく遠くの町まで行かざるをえなくなっておるし、そろそろ引っ越そうかと思っておるんじゃよ」
「そうなんですか……」

アクアが気の毒そうに言う。
たしかにロバートの言うとおり、老人が一人生活するには不自由すぎる町だった。
会話も成立せず、怒鳴り散らされるだけの毎日に耐えられる人などいるはずないであろう。

「困ったな。これじゃ占い師に言われてここに来た意味がないぞ」
「それならあたしの用事に付き合って……て言いたいところだけど、もう夕方になっちゃったし、これから行ったんじゃ着くのは夜中ぐらいになっちゃうわ。どこか泊まる所はないのかしら」
「町があんな様子じゃ無理だな。他の町へ行くしか……」

三人が泊まる場所に困っていると、「それならわしの家に泊まるといい」とロバートが提案をした。

「ここから次の町までは距離も遠いし、この辺りは物騒なんじゃ。人さらいが出るかもしれん」
「人さらいですって?」

ロバートの話では、時々ザリの町に訪れる旅人や通行人たちがこつぜんと姿を消すことがあるらしい。
そして、そんなことがあった日の夜は町の方角から奇声が聞こえてくるという。

「それから、人の叫び声も聞こえる夜もあったんじゃ」
「それはヘンね。ますます怪しいわ」

突然姿を消す人たち、町から時折聞こえる奇声と人の叫び声、そして崩壊した建物。
アクアたちがここへ導かれたのはこれが理由だったのだろうか。

「ところで、おじいさんはひとりでここへ越して来たんですか?」
「いんや。ここへは妻と孫と一緒に越して来たんじゃが、ある日突然行方不明になってしまったんじゃ……」
「ご家族の方も行方不明に?」

アクアが聞き返すと、ロバートは悲しそうに頷いた。

「そうじゃ。ちょうど一週間ぐらい前になるかのう。妻はあの町が嫌いじゃったから、遠くの町まで買い物に行くと言って孫と出掛けたきり、帰ってこなくなってしまったんじゃ……」
「二人の行方が分からなくなってしまったのと、夜に聞こえてくる奇声や悲鳴は、何か関係があるのでしょうか?」
「こうなったら、夜になるのを待って町へ偵察しに行きましょうよ」
「そうだな。で、誰が町へ行くんだ?」

クリスが訊くと、アクアとルーンは無意識にクリスを見た。

「……やっぱり僕か」

どうやらアクアもルーンも、偵察に行くのは当然クリスだと思っていたようだ。
クリスはノーと言っても無駄だと悟ったようで、しぶしぶ偵察役を引き受けた。

「じゃあクリス。いい?まずは町の様子を、ざっとでいいから見てきてちょうだい。その状況しだいで、これからの作戦をあたしが立てるわ」
「わかった」

そして、日が落ちるぐらいにクリスは町へ偵察に行った。
アクアは少し不安だったが、ルーンは「クリスなら大丈夫でしょ」と言って、あっけらかんとしていた。

クリスが偵察に行っているあいだ、アクアは何度も外を覗いてはそわそわしていた。
しまいには、ルーンに「ちょっと、少しは落ち着いたら?」と言われてしまった。

やっとクリスが偵察から戻ってきた頃には、すっかり夜も深くなっていた。
住人に気付かれないようずっと気を張っていたのだろう、いつもの澄んだ青い瞳が淀んでいるように見えた。

「で、町の様子はどうだったの?」
「なんだか町の集会所みたいな所へ、大きな袋をいくつか運んでいくのを見たんだ」
「大きな袋ですって?」
「ああ。しかもその袋は動いていた気がする。動物の動きとはちょっと違ってたし、もしかしたらロバートさんが言っていた、さらわれた人たちかもしれない」
「じゃあ、もしそうなら町の人たちが人さらいで、旅の人たちや通行人を次々と……」

アクアはそこまで言いかけて、背筋がざわっとなった。
もしもクリスが見た大きな袋の中身が人間ならば、ザリの町の住人たちは、とんでもない組織かもしれないということだ。

「とにかく、もう一度偵察に行く必要があるわね。クリス、頼んだわよ」
「は?また僕?」
「当たり前でしょ。偵察役はあなたなんだから。ただし、今回はあたしたちも後からこっそりついて行くわ。何かあった時のためにね」

そしてルーンはポーチから小石くらいのガラス玉を取り出すと、クリスとアクアに手渡した。

「これはおしゃべり玉といって、連絡を取り合うための魔法道具なの。連絡したい相手を思うだけで、玉がそれを感じ取ってくれて話をすることができるのよ」

「へえー、すごい玉だな」と、クリスは玉をじっと眺めながら言った。

「いい?じゅうぶんに警戒して行くのよ」
「クリス……気をつけて」
「マリン、なんて顔してるんだよ。それより二人も後からついて来るんだから、じゅうぶん注意するんだぞ」
「ええ」

三人は神妙に頷いた。
実行は明日。
はたして、無事に偵察を終えることができるのだろうか。






to be continued...



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aQuA -アクア- / Chapter 5 - part 1


Chapter 5




 1



次の日、昼から偵察に出掛けた。
昨日の今日で顔がばれているだろうということで、うまく潜り込むためそれぞれ変装して町に入ることにした。

アクアは腰くらいまでのウェーブヘアを、頭の高い位置で束ねて雰囲気を変え、ルーンは肩までもない髪を、オールバックに固めて眼鏡をかけた。
クリスはというと、髪をどうにか固めようとしたが、髪質のせいかワックスが合わなかったのか、どうやってもうまく固められず、仕方なく帽子を被り、暑い中マントを羽織った。
衣装はロバートが用意してくれたのだが、本人は目的も忘れたように、それぞれに服を当てながら楽しんでいた。

クリスが町に入った時、近くにいた男がちらっとクリスを見たが、特に怪しむ様子はなく、すぐに視線を外して通り過ぎて行った。

「……とりあえず怪しまれているかんじではないわね」

木の陰に隠れていたルーンが町の様子を伺いながら言った。
クリスが町の中を偵察しているあいだ、ルーンとアクアは町のすぐ近くで待機することになっていた。
空は穏やかな晴れ空で、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
町が崩壊していること以外は、平和そのものだ。

「ーン……マリン、聞こえるか?」

突然クリスの声がして、アクアは辺りをきょろきょろ見回した。
しかし、どこにもクリスの姿はない。
ルーンが「何してるの。おしゃべり玉よ」と、言いながらおしゃべり玉を胸元から取り出した。
なんてところに入れているのだろう。

「あ、そうでしたね」
「あなた、敬語やめてっていってるでしょ」
「ご、ごめんなさい」
「ルーン、今そんなことを言ってる場合じゃないだろ。それより町の人たちが……とにかくそっちへ行く」

クリスは呆れながらそれだけ伝えると、すぐさま中継を切ったようだ。
ルーンが何があったのか訊いても応答はなかった。

「いったいどうしたのかしら」
「さぁ?でも、ひとつ分かることは、何か非常事態が起きたってことかしら」

そう言っているあいだに、クリスがこちらに向かってくるのが見えた。
少し木陰から出て手を振る。

「クリス、どうしたの?」
「やつら、これから人間を狩りに行くらしいぞ。もうすぐ町から出てくる。とにかくここで息を潜めるんだ!」

クリスは慌てて木陰に入ってくると、息を潜めて町の人たちが出てくるのを待った。
するとすぐに町から人影が見え、ぞろぞろと町の入り口まで来た時、アクアは驚いて思わず声を漏らしてしまいそうになった。

なんと町から出てきたのは人間ではなく、醜い顔の獣人だった。
「あれはグルフ族?でも、港の近くで遭遇したのとはちょっと違う……」と、ルーンがもらす。

たしかに、その獣人は港付近で出遭ったグルフ族にそっくりだ。
違うところといえば、毛の色。
グルフ族は茶色だったが、彼らの毛の色は紺色だった。
それに少し賢そうな顔つきをしている。

「人間に化けていたのね。他のものに変化できるということは、通常の魔物よりも知能が高いということだわ」

それはすなわち、全滅するかもしれないということだ。
こちらは三人に対して、あちらは十匹をゆうに超えている。戦力の差は一目瞭然である。

グルフ族に似た獣人たちは、とある方向をしきりに指差すと、そこへ向かって歩き始めた。

――あの場所は……。

「大変!彼らが進んでいる方向には、ロバートさんの家があるわ!」
「くっ、やつらロバートさんを狙う気か!」

「助けに行きましょう!」と、アクアとクリスが魔物たちの後を追いかけようとすると、ルーンが手を出して二人の行く手を阻んだ。

「ルーン!このままだとロバートさんが危ないのですよ!?」
「落ち着いて、二人とも。そうね……ちょっと考えれば分かることだったわ。なぜ、町を訪れた人やこの近くを通った人たちは姿を消したというのに、ロバートさんだけは無事だったと思う?」
「そんなのたまたまやつらに気付かれなかっただけだろ。そんなことより、早くしないとロバートさんが……」

ルーンはクリスの言葉を遮るように、人差し指をクリスの口に当てた。
突然の行動に、クリスはぐっと黙り込む。

「いい?あの老人、ロバートさん……いえ、ロバートは、やつらの仲間よ。つまり、あいつも魔物だった」
「え?それはどういう……」

アクアが聞き返そうとしたその時、不気味な風が通り過ぎた。
その風に乗り、「フハハハハハ……」と不気味な笑い声が聞こえてくる。
声のするほうを見定めると、そこにはいつの間にか前後を取り囲んでいた魔物と、あのロバートさんがいた。

「ロバートさん?どうして……」

信じられないという顔で、アクアが問いかけた。
魔物と一緒に不気味に笑うロバートは、昼間まで浮かべていた穏やかな表情は面影もなく、妖しい表情に満ち溢れていた。

ロバートは、「まだ気付かないのか。俺もこいつらの仲間だということに」と言うと、みるみる口が横に裂け始めた。
そして腕や顔など肌だった部分から紺色の体毛がわさわさと生え、顔がいびつに曲がり、一緒にいる魔物と同じ顔になった。

「お前タチ、まんまト罠に引っかかったナ。馬鹿な奴らメ……」

ロバートの声は、もうかつての優しい声ではなくなっていた。
不気味な低音で、耳に入ると身の毛もよだつような声だった。

「騙したのか!」クリスがマントの下に隠し持っていた剣を抜き構えると、何体かの魔物が、それに反応して攻撃態勢を構えた。

「うまく潜り込んだつもりだろうガ、我々は馬鹿ではナイ。人間の匂いナドすぐ分かル」

完全に魔物になったロバートが仲間に合図すると、一匹が耳障りな奇声を発しながらアクアに襲いかかっていった。
逃げようとしたが、恐怖で足が強張り動くことができない。

「マリン!危ない!」

クリスが「でやあ!」と魔物に深く斬りつけると、魔物は断末魔のような声をあげ、血しぶきを撒き散らしながら倒れた。
そしてしばらく痙攣していたが、やがて動かなくなった。

「何ぼーっとしてるの!そんなことしてたらあなた死ぬわよ!」

ルーンはブツブツと呪文を唱え、両手を天に翳した。「サンダーボルト!」

空が黒い雲で覆い隠され、やがて雷鳴が響き渡った。
そして幾多の雷がルーンの両手に集まり、彼女がそれを振り下ろすと、一匹の魔物めがけて襲いかかった。
黒焦げになった魔物は、ざらざらと砂のように崩れた。
胸を刺すような臭いが充満する。
それを見て、他の魔物は警戒してたじろいた。

ロバートは苛々したのか、声を張り上げた。「何をしてイル!あんな攻撃ぐらいでおののぐトハ、それでも誇り高き魔族カ!」

「魔族ですって!?」ルーンが叫んだ。



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Jis

Author:Jis
趣味は音楽、映画鑑賞や読書、漫画など。
気ままに小説を書いたりしてます。
時間があればどうぶつの森、モンハンもプレイ中。
忙しくてなかなか趣味に没頭できないんですが、
のんびり更新していきたいと思います。

Latest:2016.02.19 小説『aQuA -アクア-』のChapter 8 をアップしました!

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